新・山中温泉文化絵巻 小さな、始まりの芸術祭

山中温泉芸術散歩 アーティストプロフィール

Profile No. 3

作品番号

3

作品展示場所

芭蕉の館

作家名

O33 / OU Sansan

作品タイトル

① 空宿 / Void shelter  ② 器界 / The unborn-world

素材

羊腸

作品について

① 空宿 / Void shelter

家という空間、それは私たちを包み込み、アイデンティティの一部をそっと支える場である。それでいて、どこか儚く、不確かで、指の隙間からすり抜ける砂のような存在でもある。内なる「家」。それはただの物理的な居場所ではなく、私たちの心が寄り添い、静かに息づく拠り所でもある。けれども、家もまた無常の中にあり、移ろい、形を変え、やがては消え去る運命を背負っている。「空宿」と名付けたこの作品では、閉じ切ることのない空間を通して、内面と外の世界の間で揺れ動く、その曖昧で儚い瞬間を捉えたい。完全には触れられない何かが、そこに宿り、光と影のように寄り添いながら消えていくのだろう。

② 器界 / The unborn-world

服は、私たちが自ら選び、身にまとう「外側の皮膚」であり、社会や他者に向けた自分自身の表象でもあると考える。一方、腸は「内なる皮膚」とも言え、体の内側で生命活動を支える不可欠な存在である。つまり、服と腸という二つの要素は、私たちを「内」と「外」という異なる視点から包み込んでいると感じる。そして、この二つの「皮膚」の間には、何ものが存在する。外界に向けた「見せる皮膚」と、内面を守る「隠された皮膚」、その間にあるものは、生と死、自己と他者、内と外といったさまざまな境界を行き来する曖昧な存在なのではないか。「器界」は、この二重の皮膚の関係性を通じて、境界について問いかける作品である。

作家プロフィール

2023年金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科工芸専攻染織コース修士課程修了。現在、金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科美術領域彫刻分野博士在籍。
モンゴル民族を象徴する五畜から得られる素材ー腸(主に羊腸である)を用いて、アンビギュイティといったテーマにして制作している。自分自身のアイデンティティの問題に直面しながら、様々な「曖昧な境」にふらふらと揺れ、その儚さを捉えている。

主な展覧会歴

2022 年 「輪廻―033・YULING LIN 二人展」(アートベース石引/金沢)
2023 年 「記憶をほどく、編みなおす」(キャラリー無量/砺波)
「GO FOR KOGEI 2023」(岩瀬エリア・沙石/ 富山)
「金沢彫刻祭2023」(箔一ビル/ 金沢)
2024 年 「桜梅桃李・栗柿銀杏」(上野の森美術館ギャラリー/東京)
「長夜の芸術祭」(四居家/ 長浜)
第15 屆國際袖珍雕塑展 (台北/ 台湾)
「消えつつ生まれつつあるところ」(イクヤマ家/金沢)
HISAI芸術家の住む町プロジェクト2024成果発表展(津市久居アルスプラザ/津)

ご相談、お問合せは
(一社)山中温泉観光協会(0761-78-0330/otazune@yamanaka-spa.or.jp)まで